今年のアカデミー賞で、主演女優と助演女優のWノミネートを受けた作品。
シアターキノの会員デーに鑑賞してきた。
<予告編>
関連サイト:公式サイト/Wikipedia/allcinema
【以下、ネタバレあり】
この映画、まず邦題がいい。
原題は原作通りの"Wild"だが、そのまま「ワイルド」では全然興味がわかない。
具体的な数字をタイトルに入れた本は売れると言うが、本作の1600キロという距離にも、確かにそそられるものがある。
マイル換算でジャスト1000なので、「わたしに出会うまでの1000マイル」の方がいいかなと思ったけど、やっぱり日本人にはキロの方がピンとくるかな。
本作の目玉はやはり、主役のリーズ・ウィザースプーンだ。
過酷な環境での撮影で、まさに身体を張った演技。
ヌードだって辞さず、役への覚悟が感じられる。
最愛の母を亡くしたあと、浮気と薬に溺れ、旦那からも見限られて、堕ちるところまで堕ちた女、シェリル。
助けの手を差し伸べるカウンセラーにも毒づいて、唯一の親友からも愛想を尽かされかける。
誰のかもわからない子供を妊娠したところで、はっと気づいた。
このままじゃダメだ、と。
そこでふと目にとまったのが、PCTってやつだ。
PCT(パシフィック・クレスト・トレイル)とは、メキシコからカナダまで続く、山の中の自然歩道のこと。
自分を変えるために、PCT制覇にチャレンジするシェリルだが、素人女がそう簡単に立ち向かえる相手じゃない。
よくあんな重い荷物かついで、歩こうと思ったね。
すぐにあきらめて男と薬に戻ってしまっても仕方ないくらいの大変さだった。
コンロが使えず冷たい粥飯食べたり、崖下に靴を落としたり、灼熱地獄の中で飲み水がなくなったり、怪しい男に襲われそうになったり。
大の男でさえ途中で断念する険しい道を、どうして彼女は最後までやり遂げられたのか。
それは、旅の途中で、いろんな人たちが彼女を励まし、助けの手を差し伸べてくれたから。
ひとりで歩いているようでも、実はひとりじゃないのだ。
そして、そんな彼女も、ポイントごとに置いてあるノートに、好きな作家の言葉を書き残していくことで、ほかの誰かを勇気づけていく。
この気持ちがあったから、彼女はさまざまな困難に打ち勝つことができたのだろう。
シェリルが偉業を成し遂げられたもうひとつの理由は、母の存在だ。
彼女は母親が大好きで、母親の前では真人間でいられた。
そんな大切な存在を失った彼女は、梁の折れた家のように、あっけなく崩れてしまった。
あの旅は、もう一度自分を建て直すための旅。
そしてそんな彼女の心のそばには、いつも母親がいたのだろう。
時には思い出として、時にはキツネの姿を借りて、彼女の前に現れるのだ。
そういう意味でも、この母親役は、本作のキーポイントとなる。
演じたローラ・ダーンには、心底参った。
お世辞にもいいとは言えない環境で暮らしながら、愚痴ひとつ言わず、小さな幸せを大切にする、常に前向きなお母さん。
やっとこれからという時に、彼女を病が襲う。
「まだ時間があると思っていたのに」という言葉が、胸に刺さる。
どんどんやせ細っていく姿が痛々しくて見ていられない。
死に目に会えなかった子供たちが最後に見たのは、角膜を提供して目に氷を詰められた母親の姿だ。
彼女は、最後の最後まで、人生を意味のあるものにしようとする女性だった。
こんな母親を失えば、シェリルの気持ちも少しは理解しようというものだ。
そんなシェリルが、旅の後半で出会った、散歩中の祖母と孫。
その子の澄んだ歌声に、うっかり私も泣けてきてしまった。
「お母さん大好き」と涙するシェリルに、すっかりシンクロしてしまった。
本作の監督は、「ダラスバイヤーズ・クラブ」のジャン・マルク・ヴァレ。
あれもクセの強い男が主人公だったけど、そういうのが好きなのね。
今回も、しっかり感動させていただきました。
関連サイト:公式サイト/Wikipedia/allcinema
【以下、ネタバレあり】
この映画、まず邦題がいい。
原題は原作通りの"Wild"だが、そのまま「ワイルド」では全然興味がわかない。
具体的な数字をタイトルに入れた本は売れると言うが、本作の1600キロという距離にも、確かにそそられるものがある。
マイル換算でジャスト1000なので、「わたしに出会うまでの1000マイル」の方がいいかなと思ったけど、やっぱり日本人にはキロの方がピンとくるかな。
本作の目玉はやはり、主役のリーズ・ウィザースプーンだ。
過酷な環境での撮影で、まさに身体を張った演技。
ヌードだって辞さず、役への覚悟が感じられる。
最愛の母を亡くしたあと、浮気と薬に溺れ、旦那からも見限られて、堕ちるところまで堕ちた女、シェリル。
助けの手を差し伸べるカウンセラーにも毒づいて、唯一の親友からも愛想を尽かされかける。
誰のかもわからない子供を妊娠したところで、はっと気づいた。
このままじゃダメだ、と。
そこでふと目にとまったのが、PCTってやつだ。
PCT(パシフィック・クレスト・トレイル)とは、メキシコからカナダまで続く、山の中の自然歩道のこと。
自分を変えるために、PCT制覇にチャレンジするシェリルだが、素人女がそう簡単に立ち向かえる相手じゃない。
よくあんな重い荷物かついで、歩こうと思ったね。
すぐにあきらめて男と薬に戻ってしまっても仕方ないくらいの大変さだった。
コンロが使えず冷たい粥飯食べたり、崖下に靴を落としたり、灼熱地獄の中で飲み水がなくなったり、怪しい男に襲われそうになったり。
大の男でさえ途中で断念する険しい道を、どうして彼女は最後までやり遂げられたのか。
それは、旅の途中で、いろんな人たちが彼女を励まし、助けの手を差し伸べてくれたから。
ひとりで歩いているようでも、実はひとりじゃないのだ。
そして、そんな彼女も、ポイントごとに置いてあるノートに、好きな作家の言葉を書き残していくことで、ほかの誰かを勇気づけていく。
「勇気が君を拒んだら、その上を行け」
(エミリー・ディキンソン&シェリル・ストレイド)
この気持ちがあったから、彼女はさまざまな困難に打ち勝つことができたのだろう。
シェリルが偉業を成し遂げられたもうひとつの理由は、母の存在だ。
彼女は母親が大好きで、母親の前では真人間でいられた。
そんな大切な存在を失った彼女は、梁の折れた家のように、あっけなく崩れてしまった。
あの旅は、もう一度自分を建て直すための旅。
そしてそんな彼女の心のそばには、いつも母親がいたのだろう。
時には思い出として、時にはキツネの姿を借りて、彼女の前に現れるのだ。
そういう意味でも、この母親役は、本作のキーポイントとなる。
演じたローラ・ダーンには、心底参った。
お世辞にもいいとは言えない環境で暮らしながら、愚痴ひとつ言わず、小さな幸せを大切にする、常に前向きなお母さん。
やっとこれからという時に、彼女を病が襲う。
「まだ時間があると思っていたのに」という言葉が、胸に刺さる。
どんどんやせ細っていく姿が痛々しくて見ていられない。
死に目に会えなかった子供たちが最後に見たのは、角膜を提供して目に氷を詰められた母親の姿だ。
彼女は、最後の最後まで、人生を意味のあるものにしようとする女性だった。
こんな母親を失えば、シェリルの気持ちも少しは理解しようというものだ。
そんなシェリルが、旅の後半で出会った、散歩中の祖母と孫。
その子の澄んだ歌声に、うっかり私も泣けてきてしまった。
「お母さん大好き」と涙するシェリルに、すっかりシンクロしてしまった。
本作の監督は、「ダラスバイヤーズ・クラブ」のジャン・マルク・ヴァレ。
あれもクセの強い男が主人公だったけど、そういうのが好きなのね。
今回も、しっかり感動させていただきました。
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